Ankiというものを使い始めて大体2ヶ月が経過しました。
Ankiというのは分散学習システム(SRS; Spaced Repetition learning Systems)という仕組みを使った「記憶」のためのアプリの1つ。
パソコン版は無料で使うことができ、iOS版は有料で提供されています。
Anki – powerful, intelligent flashcards
もともと開発の人が自由に作ってたソフトが人気が出て、開発者が「開発に専念するためにモバイル版を有料で作った」という経緯があるソフトです。(データ同期機能なども無料で提供してくれているので、気に入ったら是非モバイル版を買いましょう)
分散学習システムという仕組みはDuolingoなども取り入れているもので「次にいつ復習するかを自動で管理してくれるデジタルの暗記カード」というイメージをするとわかりやすいかもしれません。

Ankiの使い方をちょっと工夫するだけで、英語(というか語学系の学習全般)の勉強ってやつはこんなに簡単で便利になるぞ、ってのに結構感動しておりまして、何が良かったかなどを簡単に紹介したいと思います。
システム任せで「覚えるだけでいい」という素晴らしさ
そもそも40のおっさんになった私が今更になって英語というものを学ぶ気になったのは、Anki(というか分散学習システム)という仕組みが大変素晴らしく理に適ったもので、基本的に「毎日スマホいじってるだけで英語が覚えられる」と思ったから。
今私が毎日やってるのは、Ankiアプリで単語を見て、あってたか間違ってたか(自分の判断で)答える、ということを繰り返すだけです。

これを繰り返して「今日やること」が全部終わったらそれで終了。

日によってもちろんバラツキはあるんですが、大体1日の所要時間は15分から20分くらい。この時間で、新しい単語を1日10個ずつ覚えながら、これまでに覚えた単語を復習する、って感じです。
毎日ちょっとした空き時間にスマホゲームやる代わりに、単語クイズアプリで遊んでる感覚です。
なに勉強しよう、みたいなことで悩むことなく、ひたすら隙間時間でスマホをいじって単語を暗記する。
これが本当に「隙間時間にゲームやってる」って感覚とすごく近くてとにかく手軽。過去の自分は簡単に1日1時間くらいゲームやってたし、その時間の一部をAnkiに使うだけ。これだったら続けられると思ったし、事実2ヶ月間は毎日休むことなく続けられています。
現段階では、実際に英語がどこまで出来るようになってるかは不明ですが、知らない単語の意味をたくさん覚えられた、ということだけは自信を持って間違いなく言えることです。(曖昧だったものを含めて600語くらい学んで、300くらい「熟知」と判定されている)
暗記カードより20倍効率がいい
10分かける価値があることは全て「Anki」する – ナレッジスタック
↑ここでも書いたんですが、紙の暗記カードを使うのに比べてAnkiというシステムは「20倍以上効率がいい」仕組みです。
覚えてる単語を何回も復習するのは無駄だし、逆に覚えてない単語は覚えられるまで何回でも繰り返す必要がある。
この「覚えてる単語は回数少なく、覚えてない単語は何回も問題に登場させる」という、ある意味でごく当たり前のことを人間の代わりにやってくれる。これが「Anki」という仕組みの優れているところで、こういう管理が「自動」でできることが「紙の暗記カード」との大きな違いです。
「問題に正解したかどうか」というのは自己申告しか方法がないとはいえ、それさえちゃんと答えてればあとは全部おまかせ。
「次にいつ復習するのか」というのは自分で細かい設定も出来るんですが、基本的には標準のままで大きな問題はないし、慣れてきてから考えれば十分なことです。

実体験としても、やはり何回も覚えられない単語というのは間違いなくあるし、一回で簡単に覚えてしまえる単語は本当に呆気なく覚えられるので、こういう仕組みは本当に効率が良いと感じます。
個人的な感覚で言うと、自分がこれまで知ってた単語の覚え方の100倍くらい効率いいんじゃないか、って感想。(20年以上前の自分の感覚との比較)
1タップで詳しい単語の意味を調べられる
もう1個Ankiで気に入っているのが「辞書」が簡単に使えること。
これは、最初にある程度自分でテンプレートをカスタマイズする必要があります。ただ、それさえ済ませてしまえば、Ankiカードから1タップで該当の単語を辞書で調べる、ってことが簡単にできるようになります。
今やってるのは、Macの辞書と、iPhoneの物書堂辞書アプリを開く設定。これだとオンラインの辞書と違って、内容の表示までの待ち時間がほぼゼロでストレスがない、というのも続けられる理由の一つかもしれません。

さらに単語の話で言うと、Vocablulalyというサイトでは、大手のメディアで使われている「リアルな例文」を見ることができます。
この例文というのは間違いなく現場で使われている「本物の例文」
これならば「This is a pen」みたいなのとは違う、本当にリアルな単語の使われ方、というのも覚えることができます。
(これも1タップで調べられるように設定した)

単語の自動読み上げも設定だけであとは自動
そして最後にもう1つ、これらの単語を無料で「読み上げ」をさせるという
こともコストをかけず簡単に設定することが可能です。(同じく最低限のテンプレートの設定は必要)
機能としてはiPhoneやMacに搭載されている「音声読み上げ」(Text To Speech)というものを使うんですが、こいつを使ってやれば、一般的に使われる「音声ファイルを準備する」という必要もなし。
本当に最初に音声読み上げ用のテンプレートを設定するだけで、システムが英語を読み上げてくれるようになります。
これによって無駄なストレージ容量を消費しないのはもちろん、後で例文や解説なんかを書き換えたり、新しい単語などを追加した場合でも即座に読み上げを実行してくれる、ということ。
あくまでも「機械音声」ではあるんですが、今時のスマートスピーカーの音声を想像してもらえば、一定以上の質は期待できそうでしょ?しかも言語は日本語じゃなく世界で一番機械学習が進んでるであろう「英語」なわけですからね。
iPhoneなんかだと、ヘッドフォンつけて音を聞くと「機械音声っぽさ」はあるんですが、確認できる限りどの単語も「きちんと正しい音」で発音してくれてます(私が発音するより上手なのは間違いない)
何よりも言語というものを覚える際に、目だけでなく耳からも学習できるというのは記憶の定着度が全然違います。
目で見るだけでなく耳を組み合わせて言語を学ぶのは、ある意味言語学習の基本。これまではそういうことを安価に、手軽に実現するのが難しかったんですが、それもう過去の話。
自分一人で、手間暇かけずに効率よく言語の学習ができるようになった、というのは本当に素晴らしいことです。
Text To Speechの詳しい使い方については以下のサイトがおすすめです。
TTS (Text To Speech) | アンキヨリハジメヨ
簡単な解説はここにも書いてます。
Ankiのカスタマイズ例 – ナレッジスタック – Obsidian Publish
そもそも「単語帳」はどうするか
で、こんだけ色々話をしてるんですが、あと最後に残ってるのは「何を勉強するか」
英単語を覚える場合でいうと、「単語帳」というのをどうするか。
基本的に、Ankiというツールは自分で覚えたいことをまとめた「デッキ」(単語帳)を自分で作って自分で管理するのが基本です。
ただ、そういうのをめんどくさいと感じるのもこれまた間違いないことで、そういう人のためにAnkiには「共有デッキ」というのをダウンロードできる場所というのが存在しています。
共有デッキは著作権的に大丈夫か?みたいな奴も多いのですが、↓のNGSLという単語帳は「CC BY-SA 4.0」ライセンスで元ネタが配布されているものなので、これは安心してオススメできます(私もこれを使わせてもらっています)
NGSL English-Japanese – AnkiWeb
2800語を覚えると出てくる単語の92%がカバーできる
NGSLというのは「これさえ覚えといたら出てくる単語の92%がカバーできる」という2801語が収録されたもの(数字と曜日は含まれていない)
私と同じような「学生時代に英語を勉強してて、基本くらいはわかる」人が始めるには、このくらいがちょうどよいかな、と思います。
これよりできる人には↓の画像にある「次の段階」の単語を覚えるといいです。

画像はNew General Service List Projectより。
2800という数字は、1日10語ずつ覚えるとすると、1年未満で全部覚えられる程度のもの。この中の本当に最初に出てくる単語はある程度飛ばしながら学べるくらい簡単ななものなので、多くの人はもっと早く習得できるはず。
1日20分くらいスマホいじってたら、普段目にする英単語の90%を1年で覚えられる。
この程度の手間でいいならば、英語勉強するのはメリットの方が多いな、と思えるんじゃないでしょうか?
私の場合「NFL中継を英語で楽しめるようにする」というのが最初の目標なので、来年のスーパーボウルは英語で今年より楽しく観戦できるはずです。
今後翻訳ツールが進歩して、ツールに頼れば問題ない場面というのはどんどん増えると思います。
文化を理解するみたいな高尚な理由がないとしても、なんだかんだすぐに英語が直接わかることのメリットは大きいです。何よりも、ツールの進歩で「覚えることが簡単になっている」というのもまた事実。
同じような「Anki仲間」が増えたら幸いです。

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参考
Anki – powerful, intelligent flashcards
NGSL English-Japanese – AnkiWeb