今回の記事は、ナレッジスタックに書いた3回分の「タグ」についての記事を一つにまとめたものです。
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最近、Obsidianでのタグ運用(主に名付け)を見直し、なかなかにいい感じに利用できるようになってきました。
Obsidianのタグ運用はSpaced Repetitionプラグインに大きく依存しているのですが、このツールの使い方などを含めて、ごりゅごのObsidianでのタグ運用ルールというのをまとめてみたいと思います。
タグの種類はできるだけ少なくする
まず、Obsidianでのタグ運用は「使う種類を少なくする」というのを基本ルールにしています。
もちろんObsidianでは数文字入力するだけで賢く候補のタグを表示してくれるんですが、日本語は漢字やカタカナや外来語などが混在することで表記の揺れが起こりやすく、タグが増えれば増えるほど「同じ意味の違うタグ」を間違えて作ってしまう可能性が増えてきます。
また、Obsidianは「タグをマージする」だとか「タグを一括で変換する」というような、タグを快適に使うような機能は標準では採用されていません。
対して、Obsidianは単独のノートに対してはエイリアスの機能だとかノートをマージする機能など、ノートを便利にする機能は標準状態で充実しています。表記の揺れにはエイリアスを使い、タグのかわりにインデックスノートを作ることで、似たようなノートを作ってしまった場合にもそれを一つにまとめることもObsidianの標準機能で簡単に実現できます。(ノートをマージしたときは、リンク先のノート名もきちんと統合される)
この辺を踏まえると、Obsidianでのタグ付というのはわりと「トップダウン」的な機能で、あとから変更を加えることがやりづらい仕組み。ノートをアトミックにして、それを集めて考えをまとめていく、という方向でObsidianを使う場合には、どんどんタグで分類していこうというのはあんまり相性がよくありません。
ログをすぐにとり出すためのタグ
とは言え、ごりゅごも「なにがなんでもタグは使わない」なんてことは思っていないし、まあそれなりに普通にタグは利用しています。タグの使い道には一定のルールを決めており、そのルールにそぐわないタグを使わないようにする、というのが基本方針です。
まず一つ目のタグを使うルールは、タグは「ログ」を整理するのに使う、という用途。
Obsidianでは「デイリーノート」に日記や日誌を書いていたり、特定の出来事(ブックカタリストの収録、うちあわせ、セミナーの開催etc)の時などは単独のノートを「事前準備&当日に使うメモ」として利用します。
これらのノートをあとで楽に探したいときのために限っては「タグ」を使っています。
また、デイリーノートの中に「1行ログ」的に「気温の情報」「体調のメモ」「読んだ本」「買ったもの」など少数のタグを付けることがあります。これは、タグをクリックしたときに「ざっと該当行だけを眺める」ことを目的としたもの。


基本的にこれらの内容は、特にまとめて整理したいと思わないものだったり、順番を並び替えたりする必要がない、よく使うライフログを取り出すためという目的のもの。イメージとしては、すでに使わなくなったノートに一応ラベリングをしておくか、という感覚のものです。
これらのタグは、エバーグリーンノートとかLYTとかZettelkastenとか、頭の中をノートで整理する、ということとは関係が無い用途ばかりの、おそらく今後そのノートを編集しないであろうという、記録として残しておくノートたち。こういうノートはある程度「タグ」を使って整理しています。
タグを使って「緊急ではない重要なこと」を進める
続いては、ごりゅごが最近気に入っている「Obsidian+Spaced Repetition」を使った「緊急ではない重要なこと」を進めるためのタグを使った仕事術、というもの。
突発的に「この日までになにがなんでも最優先でやらないといけない」という仕事以外は、この方法だけでだいたいうまく仕事を進められるようになってきています。
まだまだいろいろな実践方法を模索している段階なので、具体的な方法は変化していくかもしれませんが、とりあえず仮にでも名前があった方がいいかもなと思って、この方法に「インクリメンタル仕事術」という名前を付けました。
「いつかやりたいことを破綻させずに進められるようにする方法」であり「緊急ではない重要なこと」を毎日確実に進めていく方法でもあります。
緊急ではないが重要なことは「Ankiの仕組み」で実行する
エバーグリーンノートを提唱しているAndy Matuschak氏は「インクリメンタルライティング」という方法を使って日ごろの執筆を進めています。
Spaced repetition may be a helpful tool to incrementally develop inklings
この「毎日少しずつノートを書く仕組み」をもう少し幅広く、仕事全般に広げてみようというのが、今ごりゅごが試している「インクリメンタル仕事術」です。(名前はここから来ている)
具体的な方法を簡単にまとめると以下のような感じになります。
「やること」「やりたいこと」が発生したら、Obsidianの中に一つの独立したノートを作って、そのノートに振り返り用のタグを付ける。(project)そして、毎日「Spaced Repetition」を使ってちょっとずつ「ノートを書き進める=仕事を進める」ことを実践していく。
そして、このたくさんあるやりたいことの中から、今日は何をやるのか、というのを決めるのにAnkiを使った振り返りのシステムを利用します。
ある仕事をちょっと進めて、またやろうと思った仕事は「またやりたい」判定をすることで、近いうちにまた手を付ける。これはしばらくやらなくていい、というようなものは「あまり興味がない」マークをつけて、次に手を付ける日付を遠くに持っていく。またやりたいでもあまり興味がないでもない「普通」のものは「普通」判定をする。
この3種類の判定をうまく使い分けて、目の前のことをちょっとずつ進めていきます。
Ankiの仕組みでは、ノートはだんだんと「次に振り返るまでの間隔」が長くなっていきます。その中で「またやりたい」と思ったノートだけは例外的に次に振り返る間隔が短くなります。
この判定をうまく調整することで、毎日できる範囲で「重要なこと」を少しずつ進められると共に、いつかやりたいと思うことも必ず見返す日がやって来るという安心感も得られるのがポイント。
本当に「不要」だと判定したノートはこの振り返りタグを消せばいいんですが、どうしようか悩んだときでもタグを消さない限りは、必ずいつかどこかのタイミングで再び目にすることができる、ということです。
GTDを試したことがある人であればこれはGTDの「いつかやることリスト」の進化版みたいなのをイメージしてもらうといいかもしれません。
GTDのいつかやることリストは、放っておくと量が無限に増え、やがて週次レビューですべてを振り返ることが不可能になります。ここにSRSの仕組みを取り入れると、何回も振り返ったノートは振り返りの間隔がどんどん増えていくので「いつかやりたいことリスト」が1000や2000たまっても、振り返るのは数個だけ、という程度で運用が可能です。
毎日決まった時間「project」に手をつける
もちろん、これだけでは「破綻しないいつかやりたいことリスト」ができ上がるだけで、これだけで「緊急ではない重要なこと」を進めることはできません。実際の運用において、一定程度のルールが必要です。
うまく運用するために、以下の二つのルールを守るのがポイントです。
一つは、毎日必ず「project」に手を付ける時間を確保すること。1日10分なのか30分なのか1時間なのか、とにかく自分で時間を決めて、毎日「やりたいこと」を進める時間を確保する。
今日やることの中からどれをやるかは自分で選んでもいいし、ランダムで出てきた順番にとにかくやる、という方法でもなんでもいい(最善の方法はまだ見つかっていない)んですが、その時間はとにかくそのノートに書かれていることをやる。
そしてもう一つのルールは「とにかくなんか書く」ということ。
たいていの「いつかやりたいこと」というのは、まず自分が次に何をやりたいのかがわかっていません。なにをしたらいいのかわからないから「いつかやりたい」という漠然とした表現しか出来ないのです。まずノートを見て具体的に何をやったらいいのかわからないならば、GTDのルールにのっとって「これはなんなのか」を考えて、それをノートに書く。
頭の中だけで「考える」のは絶対に禁止で、とにかくノートに「なにをやろうとしているのか」「どういうことをやったら進むのか」「どういうことがやりたいのか」などを書くことで、必ず「ノートの内容を以前と違う状態にする」のをルールにする。
まとまっていなくてもいいから、まずはたくさん書く、というのがポイントです。
こうやって目の前のやりたいことが自分の中で一段落したら、ノートを「評価」する。(またやりたいのか、いつかそのうちやれればいいのか)
これを繰り返して一定の時間が過ぎたら、今日の「緊急ではない重要なこと」に手をつける時間はおしまい。全部振り返る時間がなかったときは、結局それは「時間が足りない」という意味なので、残りを「次に送る」処理をして、また次の機会に手を付けられることを祈ります。
先日、Amazonの書誌情報をObsidianのmd形式でコピペできるようにするブックマークレット、というやつを作ったんですが、これはこの「緊急ではない重要なことタイム」に毎日少しずつ進めてでき上がったものです。
Amazonの書誌情報をObsidianのmd形式でコピペできるようにするブックマークレット – ごりゅご.com
最近はこの「緊急ではない重要なことタイム」の中で次に作りたい本を考えたりもしていて、こうやって少しずつアイデアを「熟成」させていくことで、中長期の目線で「ものすごくたくさんのことが書けるようになる土台」としても発展することを期待して、ノートを作っていたりもしています。
究極的にはすべてのノートを振り返りたい(がそれはさすがに無理)
Obsidianのノートは「緊急ではない重要なこと」をやるため以外にも、「いつか振り返りたい」と思うノートは無数に存在します。
究極的には「すべてのノートがいつか振り返りたいもの」であることは事実ですが「いつかやりたいことリスト」と同じように、すべてのノートを定期的に振り返ろうとすると必ずいつか破綻します。
振り返りに使う3つのタグ
これらの「厳選した振り返りたいノート」には現在3種類のタグを利用しています。
- review
- topic
- draft
上から順に優先度が高く、優先度が高いものほど丁寧にノートを振り返るようにしています。順に、もう少し細かく説明します。
きちんと振り返りたい「review」タグ
まずは、ある程度以上きちんと丁寧に振り返りたいノートに付ける「review」という名前のタグ。これは基本的に「読んだ本」と「著名人の人物名」がメインで、それ以外のことにはほとんど使いません。
自分が読んだ本、特に読書メモをきちんと書いたような本などは、できるだけきちんと内容を覚えていたいので、意識して何回もノートを見返すようにしています。
また、本以外でも、マンガやらゲームなんかも同じように(ある程度面白かったものには)「review」タグを付けています。これらは、ノートを振り返るとともにコンテンツをもう一度思い出して楽しむ、という要素も強いです。
他にも、本を読んでよく出てくる人物(哲学者が多い)や有名な本についてのノートなんかもreviewタグを利用。これらは、ノートを開くたびに少しずつ読んだり調べたりして情報をアップデートしています。これは「ちょっとずつ勉強したいことリスト」みたいなノートたちでもあります。
ノートをトピック毎にまとめたノートに使う「topic」タグ
つぎに振り返るのは、特定のトピックについてのノートを集めた「トピックノート」につける「topic」というタグ。
🌱トピックノートを使ってノートをまとめる – by goryugo – ナレッジスタック
このノートは今でも自分の考えを整理するのに非常に重要なノートで、ここから新しいノート同士のつながりが見つかったりすることが多くあります。
これらのノートを定期的に振り返ることで、新しいノートは「どのトピックに入るか」などを思い出しやすくなったり、このノートに他に追加できるノートはないかな?って考えたりもしやすくなります。また、ノートを振り返るときには、トピックノートに並んでるリストの順番を入れ替えて見出しを付けたり、中身が長くなればノートを分割したりと、できるだけ丁寧に「俺のためのリスト」を作っています。
トピックノートを重視する理由は、これさえあればすべてのノートにアクセスできる(はず)だから。
すべてのノートが「トピックノートのどれか」からリンクされていれば、すべてのノートはトピックノート経由で見返す機会が作れます。そういう意味で、ノートはできる限り1つ以上のトピックノートからリンクされている状態を目指します。
下書き段階の未完成のノート「draft」タグ
最後にもう一つ振り返るタグが、まだ未完成で下書き状態のノートに付ける「draft」というタグ。
すべてのノートは最初はまず「下書き」です。ふと思いついたアイデアだったり、読書メモの断片というのは、最初はほんのちょっとした「メモ」程度のもので、放っておいたらあとで自分で見返しても内容がわからなくなってしまいます。こうしたノートは、最低限「このノートだけを見て意味がわかるもの」にしておく必要があります。
こうやって「このノートだけを見て意味がわかるもの」になって「他のノートにリンクするorリンクされてる」状態になったら「下書き終了」
下書きが終わればノートから「draft」タグは消去します。
基本的に、新しく作ったノートはすべて「draft」タグを付ける仕組みも作っていて(lynchjames/note-refactor-obsidian: Allows for text selections to be copied (refactored) into new notes and notes to be split into other notes.を利用)、すべてのノートは必ず「間隔を空けて」振り返り、少しずつ完成を目指していきます。
このノートはやっぱりいらないな、とか思ってノートを消すこともあるんですが、この振り返りをきちんとするためにも、デイリーノートに書いたメモは、毎日必ず一つ一つのノートに分割するということを徹底しています。
まとめ
draftという名前のタグを思いついて、未完成のノートにタグを付け、終わったら消す、という方法を思いついたことで、タグを使ったノート整理仕組み全体がうまく回るようになってきました。
ノートの整理(draftタグの完成)に使う時間も、平均して1日30分未満で完結するくらいになっており、これならば他の人にも「この方法めっちゃいいと思う」と言えるようになってきかな、という感じ。
実は他にも、いい感じのノートができたと思った「エバーグリーンノート」につけた「green」ていうタグがあったり、ある程度「構造」を持ったノートを作りたいと思って付けた「str(structure)」タグとかもあるんですが、これらはまだ自分が納得できる使い方に至っていなくて保留中。
まだ考えることはありますが、1年半程試行錯誤してようやくある程度安定した、自分にとって理想のObsidianの使い方が見えてきたかな、という感じになってきました。
以下、今回の記事と関連した参考情報です。
st3v3nmw/obsidian-spaced-repetition: Fight the forgetting curve by reviewing flashcards & entire notes on Obsidian.md
lynchjames/note-refactor-obsidian: Allows for text selections to be copied (refactored) into new notes and notes to be split into other notes.
Incremental Writing · st3v3nmw/obsidian-spaced-repetition Wiki
Spaced repetition may be a helpful tool to incrementally develop inklings
💎Spaced Repetitionプラグインで「Ankiっぽい」ノート見直しの仕組みを実現
🌱トピックノートを使ってノートをまとめる – by goryugo – ナレッジスタック
💎Linking Your Thinkingを使いやすくするために重要なObsidianのエイリアス機能