アトミックなノートを作るときによくある失敗を元に、アトミックノートの作り方を掘り下げる、ということをまとめようとしたんですが、そのコンテンツを上手にアトミックにまとめることが出来ませんでした。 そこで、まずはできることを書こうと考え直し、今回はごりゅごがObsidianの大きなメリットだと考えている「Ankiとの親和性の高さ」の話をしたいと思います。 今回は導入編というか前置き的なもので「Obsidianと一緒に使うとどう便利なのか」という視点で考えてみたいと思います。 (以降、今までと違う文体で書く練習) ## 「Anki」と「暗記」は別のものだと考える Obsidianの強みはAnkiと連携できることである。 [💡Ankiの効果と活用シーンの多彩さを語りたい](https://goryugo.com/20210203/anki-2/) [Ankiを使って英語も知識も忘れない環境を作る](https://goryugo.com/20210119/anki/) [Ankiを使った英語学習が紙より20倍以上効率がいいので是非試してみて欲しい](https://goryugo.com/20210309/anki-english/) もちろん強みはそれだけではないが、AnkiというツールとObsidianは本当に相性がいい。Obsidianというツールのなにがいいのか、ほかのノートアプリとなにが違うのかと聞かれたら「Ankiとうまく連携できること」と答えるくらいにはObsidianとAnkiは相性がいい。 自分自身、こんなにも「Anki」が気に入るなんてことは思いもよらなかった。学生時代には「暗記」という行為は「誰でもできる程度の低いもの」で「機械に任せるべきこと」なので「自分には必要ない」と感じていたし、2020年が終わる頃までほとんど同じことを思っていた。 だが、同じように考えて「Anki」を「暗記するための道具」だと考えて無条件に切り捨てるのはもったいない。Ankiは日本語の「暗記」という言葉が由来になっていて、どうしてもそれが強く紐付いてしまうが、アルファベットで表記する「Anki」と「暗記」という日本の概念は別のものと考えた方がいい。 日本語で「暗記」という言葉を使うと、多くの人は「覚える」という概念と強く紐づくだろう。それ自体は決して間違いではないのだが、この機会に新しく「Anki」という(アルファベット表記の)新しい概念を習得してしまうといい。 ここでは「Anki」は知識を身につける(ことを補助する)ツールだと考える。 ## 「覚える」ことと「知識を身に付ける」ことは違う ここ1〜2年、学ぶということを学べば学ぶほど「知識」の重要さがわかってくるようになった。特に「覚える」ことと「知識」という言葉における概念の違いは重要で、それが理解できると「Anki」に対する見方が変わる。 Ankiは、暗記にも役立つツールであることは確かだが**「覚える」ことを目的にするのではなく「知識の身体化」を補助するツール**であると考えた方がよい。知識の身体化において「暗記」はある程度必要なことではあるが、あくまでもそれはAnkiというツールから得られるものの一つの側面でしかない。 ## Ankiによる「知識の身体化」 まず最初に、今回は「覚える」と「知識」の違いを説明するために、勉強と関係なさそうなことを題材にして話をしたい。 ごりゅごは、半年ほど前から近所のプールで水泳をはじめた。インストラクターがいるような豪華な環境ではなく、近所の市民プールで勝手に泳いでいるだけだが、やるからにはある程度上達はしたい。競技会に出るような能力は求めていないが、スマートなフォームで30分以上の時間を楽に泳げるようになりたい。 だが、基本的に市民プールではスマホの持ち込みは不可能。水泳をやっているその場でわからないことを調べたり、動画を撮ってでフォームを確認したりすることもできないので、水泳の前後に予習復習を行い、それをベースに泳ぎ方を身に付けるしかない。 最初の3ヶ月くらいは、こんな考えに至ることもなく、ほぼ無我夢中で泳いでいた。 少し泳ぐことに余裕が出てきた頃、インターネットで基本的なクロールの泳ぎ方を学ぶ、というところに考えが及ぶようになった。 [50歳直前ペーパースイマー、100m「美メドレー」への道の記事バックナンバー:スポーツ・エクササイズ:日経Gooday(グッデイ)](https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100010/?TOC=2) [クロールの泳ぎ方を忘れてしまった大人のための「クロール再入門講座」 Tarzan Web(ターザンウェブ)](https://tarzanweb.jp/post-184269?heading=2) そしてその頃、上のような良質(と思われる)記事を見つけ出し、ノート(Obsidian)にポイントをまとめた。 ![](img/goryugo.com/wp-content/uploads/2022/10/220626_10.36.49ss.png) このあたりのことを1ヶ月くらい続け、ある程度基本が理解できたと思ったら、それらの内容を整理してAnki問題を作成。 ![](img/goryugo.com/wp-content/uploads/2022/10/220626_10.38.59ss.png) 最後に、日常生活の中でAnkiアプリを利用して、自分で作った問題を繰り返しAnkiする。 当初は25m泳ぐだけで息切れして次が泳げなかったごりゅごは、初期とは比べ物にならないくらい泳ぐ能力が上昇し、力を抜いて楽に泳ぐことができるようになった。前日、ものすごく楽に泳げた感触があったので 、思い立って「長距離」に挑戦してみたら、300m連続で楽に泳ぐことができた。(まだちゃんとしたターンは出来ない) ある程度の水泳経験者からすればなんでもないことであるが、水泳初心者の自分からしたらこれは快挙である。次回は1000mに挑戦するぞとやる気に溢れ、始めた頃より水泳が圧倒的に楽しくなっている。 なぜこんな水泳の話を最初に持ち出したのか。自分が長い距離を楽に泳げるようになったのは、楽なクロールの泳ぎ方を「覚えた」からでなく「身体化された知識として身に付けることが出来た」という実感があるからである。 クロールの楽な泳ぎ方を「覚える」だけでは、自分がその方法を使って泳げるようにはならない。覚えたことを自分が「使える」ようになってはじめて「知識」になった、と言える。 「今からクロールの泳ぎ方を教えます。まず大事なのはストリームライン。ストリームラインとは水の抵抗が少なくなる流線型の姿勢です。これを保つためにはまず肺に空気をたっぷり吸い込む必要があります。肺に空気をたっぷり吸い込むことで浮力が生まれ……」 ということを**言われて一回で全部覚えて実践することなんて確実に不可能**。 とは言え、こういった知識なしで「勘」でいきなり上手に泳げるようになるかといえばそういうわけではない。ある程度基本を学ぶことは必要だし、ある程度実践で体で覚えることのどちらも重要なのは間違いない。 そこでAnkiなのである。 泳ぎ方は「体で覚える」ことは必須だが「なにを体で覚えるべきか」ということは「頭で覚える」ことができる。頭の中で意識することが無意識に出てくれば、泳いでいる最中にも意識すべきことは思い出しやすい。 スポーツでイメージトレーニングが重要なのは、もはや当たり前のことだと認識しているが、イメージトレーニングができるようになるためには「理想の形」がきちんとイメージできるようにならなければならない。 Ankiは、この「イメージトレーニング」に相当する部分を家の中でも、自然に実践できるようにしてくれるツールだということが出来る。(もちろん、家でAnkiしているときに実際に体を動かしてイメージトレーニングするのも非常に有効な方法である。文字通り「大事なことは体で覚え込む」ことで、泳いでいない時間にも「泳ぐ練習」をすることができるし、それによって、実際に泳いでいる時間の練習効率も上がる) 泳ぎ方の「Anki」を始めたのはここ1ヶ月くらいなのだが、この期間から明らかに「これまでとは違う」感触で泳げるようになった。 ## Obsidianで「全体」をまとめてからAnkiすることができる 多くの人がイメージするAnkiの使い方は、外国語学習(単語を覚える)に活用することだろう。確かにそれはそれで有効だが、この水泳の事例のように使い方次第、考え方次第でおよそ考えうるありとあらゆる「学ぶ」ことに活用できるのである。 そして、ObsidianとAnkiが連携できると便利なのは、先ほどの水泳のように**Obsidianにまとめた「知識」を無意識のレベルで取り出せるようにする**という一連の流れを苦労することなく実現できる、ということである。 Obsidianを使っている最中に、覚えておこうと思い立った内容はすぐにAnki問題にできる。 たとえば、Obsidianに読書メモを残している人は(このニュースレターを読んでくれている人であれば)一定数いるはずである。 みなさんが読書メモを残した理由は「本に書いてあった内容を覚えておきたいと思った」からだと言っていいだろう。それが100%の理由だとは言わないが少しくらいは「覚えたい」という意識があったはず。 ならばそのノートの内容はAnkiすればいいのである。 Ankiを使えば、読書メモの内容は簡単に覚えられる。Ankiアプリは、適切な頻度で何回も問題を提示してくれる。忘れたらまた出てくるし、覚えていたらしばらく出てこない。これを何度か繰り替えすだけで、苦もなくノートの内容を覚えることができる。 Obsidianの読書メモは、どんどんAnkiすればいいのである。 ごりゅごの設定では、Obsidianの好きなノートに`RNAは==Ribonucleic== acidの略`と書けば、=(イコール)で囲まれた部分を問う、以下のような問題ができあがる。 ![](img/goryugo.com/wp-content/uploads/2022/10/220624_14.37.17ss.png) さてここで、最初に「知識」と「覚える」は違うといっていたのに、途中から「覚える」ことについての話にすり替わっていたのに気がついただろうか? 正直なところ「覚える」と「知識」の違いや、Ankiする際になにをどう区別するのかという線引きはすごく難しい。まだ自分もきちんと万人を納得させられると思えるような言語化はできておらず、こうやって書きながら考えを進めている段階であることも事実。 現段階まず言えるのは、知識を得るためには一定程度「覚える」という行為は必須であるのは間違いないこと。そして、知識の習得にAnkiを活用するには「いい問題」を作ることができるようにならないといけない、という点を掘り下げることにヒントがあると考えている。 実はこの、いい問題を作るという行為は非常に奥が深い。そもそもまず、自分でAnki問題を作るという行為自体にも「覚える」ことから「知識」へと繋げる理解の効果がある。(これは、アトミックノートを作ると書いたことを理解できる、というのとほとんど同じ) また、ノートに書いた内容を「Anki」していくと、最初に作った問題が「よくない問題」であることがわかり、その問題を作り直す、ということも多々ある。これもまた「覚えた」ことが「知識」へとつながっていることの証であったりもする。 いい問題を作ろうとすること自体が、知識の習得に役立つ、とも言えるのだ。 そして、こうやって問題を作るときに、Ankiアプリで独立して問題を作るのではなく、Obsidianのノートを見ながら複数の問題は作ることが出来る、というのも知識の習得に重要なのである。問題一つ一つを見つめるのではなく、ノート全体を見ながら、必要十分な量の問題を作ることが出来るのはObsidianがあるからこそである。 (初期設定さえ済ませれば)ObsidianのノートからAnkiの問題を作るのは驚くほど簡単。Obsidianの好きなノートの中で「穴埋め問題」を作りたいならば穴埋め部分を`==`で囲うだけ。 ![](img/goryugo.com/wp-content/uploads/2022/10/220626_10.29.13ss.png) 初期設定は多少複雑に感じるが、以下の記事を読めばなんとかなる。(余裕があれば、そのうちもう少し手短な設定方法をまとめたいとも思っている) [Obsidian\_to\_Ankiの使い方 : ZettelkastenとSRSを組み合わせる](https://zenn.dev/estra/articles/integration-obsidian-and-anki) * * * この記事は、次に書こうと計画している考えている「Ankiに関する本」の導入的な記事としても使えるかな、と考えて書いたものでもあります。 今のところ、こういう感じで少しずつ構成を「Zettelkasten的に」作ってて(Obsidianについてのことを一通り書くことが出来たら)次はAnkiに関する話を少しずつまとめていこうと思っています。 ![](img/goryugo.com/wp-content/uploads/2022/10/220623_12.02.53ss.png) ひとりでも多くの人がこれをきっかけにして(外国語学習ではない)Ankiの使い方に興味を持ってもらえたらうれしいです。 * * * この記事は、ニュースレター「ナレッジスタック」に書いたものを編集し、まとめ直したものです。ニュースレターは以下から登録いただけます。