読書日記(事実の記録)が書けるようになったら、次はそこから「一つだけ学ぶ」練習に進みます。
日記の段階では、本のタイトルやページ数、あるいは面白かった章のタイトルなどを記録しました。
しかし、この記録を残したものはあくまでも「ログ(記録)」にすぎません。
この記録自体は非常に有用なものではありますが、まだこれだけでは「あなたの知識」にはなりません。
次ののステップでは、こうした「有用なログ」を、後から活用可能な「アトミック・ノート(知識)」へと構造化する手順を説明します。
### 「全部」をまとめようとしない
まず知っておいていただきたいのは、多くの人が読書メモで失敗する原因の多くは、「全部まとめようとすること」にある、ということです。
それは、あなたが読んだ本が「よい本」だと感じれば感じるほどこの傾向が強くなる危険性をはらんでいます。
よい本田と感じれば感じるほど、そこに書かれていることはどれも重要なことに見えてきます。
当然そうなれば、重要なことをきちんと覚えておこうと思ってメモの量が増えていきます。
これは大変立派なことです。
しかし、21世紀を生きる我々は時間に追われ、自由に使える時間は限られています。
まず覚えておくことは「重要」を基準にしないこと。また「すべて」を目標にしないことです。
そもそも著者ですら自分が書いた本を一字一句覚えているわけでもないわけで、読者が「完璧に」本を読むことなんて、できるわけがない。
読書メモを上手に残すことだって「スキル」なわけで、それは誰もがいきなり上手にできるわけではない。
だからこそまずは少しでいいから確実にできることを積み重ねていく。
具体的には、1冊の本から、たった1つでも「自分の言葉で説明できる知識」(アトミックノート)を生み出すことができたら合格。そう考える。
### Step 1: 「自分が面白いと思った」1行を選ぶ
では、どうやってその「一つ」を選べばいいのでしょうか。
あなたの手元には、読書日記(ログ)があります。あるいは、読み終わった本そのものがあります。
それを見返して、**「ここだ」と思う1箇所**を選びます。
基準一つ。**「あなたが一番面白いと思ったこと」**を選びます。
本の文脈とかけ離れたことでもまったく構いません。
役に立ちそうなことを選ぶわけではありません。重要そうな場所を選ぶわけではありません。著者が重要だと言っている場所を選ぶわけでもでもありません。
「へぇ、そうなんだ!」「なるほど!」と思ったこと、感じたこと。
私の場合それは「ひとに話したくなること」という基準で考えます。
そういう「おもしろいこと」「いいたいこと」こそが原動力です。他人がどう思うかは関係ありません。あなたが面白いと思った事実。それをいかにして自分が面白いと感じられるノートにしていくか。それもまたモチベーションにつながるのです。
### Step 2: 読んでない人に分かるように説明する
選んだ1行(あるいは事実)が決まったら、次にやることは「タイトルをつける」ことです。
ここで難しく考える必要はありません。「著者の主張を正しく要約しよう」とすると、また手が止まってしまいます。
そうではなく、こう考えてください。
**「この1行は、つまりどういうこと?と友人に聞かれたら、どう説明するか?」**
その「説明の言葉」が、そのままタイトルになります。
例えば、あなたが「人間は忘れる生き物だ」という一文を選んだとします。
友人に「それってどういうこと?」と聞かれたら、どう答えますか?
「全部覚えようとすると失敗するってことだよ」
「忘れることを前提に仕組みを作ったほうがいいってことだよ」
その答えを、そのままタイトルにします。
**「タイトル:忘れることを前提に仕組みを作る」**
ここでもルールは一つだけ。「〜について」は禁止です。「忘れることについて」では説明になっていません。「AはBだよ」と言い切る形で、友人に教えてあげるつもりで書いてください。(テーゼ形式)
人間は忘れる生き物です。数年も経てば(それどころか1ヶ月や2ヶ月でも)、今の自分にとっての「当たり前」は消え去り、未来の自分はほとんど「他人」のような状態になってしまいます。
だからこそ、「友達にわかるように書く」というルールを徹底してください。それは、今はすべてを理解している自分ではなく、文脈を忘れてしまった「未来の自分」が読んでも一目で内容がわかるように書き残す、という自分自身への最大の配慮でもあるのです。
### Step 3: 忙しい私たちのための「引用活用術」
もちろん理想を言えば、タイトルだけでなく、中身(本文)も自分の言葉で書いた方が思考の訓練になります。可能ならば、文章もすべて自分出かけた方が得られるものは大きいです。
しかし、私たちは忙しい日々を生きています。完璧を目指して挫折するより、妥協してでも続ける方がずっと重要です。
とにかく合格ラインは低くしておきましょう。
そもそも、あとから見てわかるタイトルを作ることはめちゃくちゃ難しいのです。
そんなタイトルを作ることができたのならば、もう中身なんてどうでもいい。(実際に、ほとんどの場合よいタイトルが書かれていれば中身はたいていAIに聞けば「わかる」ような時代です。大事なのはタイトルを自分で考える、というトレーニングの過程です)
あなたが考えた「最高の説明(タイトル)」と、その証拠となる「引用(本文)」のセット。
これがあれば、それは立派なアトミック・ノートとして機能します。
後で読み返したとき、タイトルを見れば「ああ、こういうことね」と瞬時に理解できる。そして詳細は引用を読めばわかる。
それで十分です。
### ゼロよりイチを積み重ねる
「1冊の本を全部まとめる」のは不可能に見えますが、「1冊の本から、自分が面白いと思った1行を選んで、友人に説明するタイトルをつける」
このくらいが、忙しい現代人に可能な100点満点の読書メモの方法ではないかと私は考えます。
1冊から1つのノートを作れば、あなたのノートには確実に「使える知識」が1つ増えます。
それを10冊続ければ、10個の「身体化された知識」が手に入ります。
ゼロを積み重ねてもゼロですが、イチを積み重ねれば、それは時間をかけて蓄積され、強力な情報基盤へと繋がります。
まずは1つ、作ってみてください。
その「たった1つのノート」が、効果的なノート作成の起点となります。