# Softube三種の神器、最後のピース「Hermonics」レビュー
## 1. はじめに:BluetoneとTAPEの、その先へ
Softube社のアナログモデリングプラグインの中でも、音を「揃える」万能ツールの`Bluetone`、そして全体に統一感を出す「雰囲気作り」の`TAPE`は、多くのDAWユーザーにとって欠かせない存在となりつつあります。私自身、この2つは手放せないツールです。
しかし、この強力なコンビネーションの、さらに一歩先へと進むための「第三の矢」が存在します。それが、今回紹介する`Hermonics Analog Saturation Processor`です。これは、私が考えるSoftubeアナログ三種の神器、その最後のピースを埋めるプラグインです。
## 2. Hermonicsがもたらす「華やかなサチュレーション」
`Hermonics`の役割は、一言で言えばサウンドに「色気を出す」ことです。その正体は、サチュレーションによって倍音を豊かにし、音色を「華やか」にする効果にあります。
ただ音圧を稼いだり、歪ませたりするのとは一線を画し、音の輪郭は保ちながら、存在感をぐっと引き上げてくれます。特に、ボーカルやリード楽器など、ミックスの中で際立たせたいパートに適用すると、その真価を発揮するでしょう。
## 3. なぜHermonicsは「難しい」のか?
ただし、`Hermonics`は`Bluetone`のように「ただ通すだけ」で良い結果が得られる親切なツールではありません。むしろ、その逆です。パラメータ設定によっては、あっけなく音が「濁った歪み」になってしまう、非常に繊細で扱いが難しい側面を持っています。
この「難しさ」こそが、`Hermonics`を単なる便利ツールではなく、音作りを深く探求するための「楽器」たらしめている所以でもあります。
## 4. 攻略法:「パラレル処理」という考え方
この繊細なプラグインを使いこなすための鍵は、「パラレル処理」にあります。具体的には、プラグイン内部にある「Dry/Wet」のつまみを活用することです。
まず、インプットゲインを上げて積極的なサチュレーションを作り、音が歪み、濁ってしまうところまで追い込みます。その上で、Wet(エフェクト音)の比率を下げ、Dry(原音)と混ぜていくのです。こうすることで、音の芯はそのままに、`Hermonics`がもたらす「華やかさ」だけを適切に加えることができます。このひと手間が、「濁り」という副作用を克服し、このプラグインの美味しい部分だけを引き出すための最も重要なテクニックです。
## 5. まとめ:三種の神器を揃えるということ
`Bluetone`で土台を固め、`TAPE`で世界観を作り、`Hermonics`で個性を輝かせる。この3つの連携によって、Softubeが提唱するアナログワークフローの全体像が見えてくる、と締めくくります。
`Bluetone`と`TAPE`をマスターし、もう一歩先の音作りを目指したい。`Hermonics`は、そんな探究心あふれるユーザーにとって、挑戦的で、この上なくやりがいのあるツールとなるはずです。