[Obsidianで作る「トピックノート」についての話](https://knowledgestuck.substack.com/p/obsidian-bdb?s=w)に続いて、アトミックなノートについて掘り下げます。
トピックノートをうまく使うには、前提として「手元にあるノートが扱いやすい状態」になっていないといけません。一つのことだけが書かれたバラバラのノートが手元にあるから、それを集めて、組み合わせて「一つ上の視点でまとめる」ということができます。
[ナレッジスタック](https://knowledgestuck.substack.com)でこれまで何回か触れてきた「アトミック・ノート」の価値は、この扱いやすさです。トピックノートを作ろうとするときには、ノートはアトミックでないと意味や価値が大きく損なわれてしまうのです(ノートを一つのことに分ける、ということ自体に「理解」の価値はあるけれども、今回それは置いときます)
今回は「トピックノートを便利にするためにはまずアトミックノートが必要である」ということを踏まえて、では実際にどうやって「アトミック・ノート」を作るのか。アトミックノートがなぜ便利なのかという方向ではなく、アトミックノートをどうやって作るのか、という観点でノートについて考えてみたいと思います。
## 10秒で理解するアトミックノート
まずごくごく簡単に「アトミックノート」とはどういうものなのか「zettelkasten」だとか「梅棹の情報カード」という言葉にピンとくる人であれば、それと同じものだと思ってよい。
そうでない人向けに簡単にまとめると、アトミックノートというのは「一つのことだけが書かれた短いノート」のこと。
そして「一つのこと」かどうかの判別基準として「そのノートに要約タイトルが付けられるかどうか」を判断基準にする。ここで悩まずにタイトルを付けられるならば、ノートに書かれているのはおそらく「一つのこと」だと言ってよい。
今回はこのノートの「なにがよいのか」には触れないで、実際にどういう手順で、どういう方法でこの「アトミックノート」を作っているのかをまとめる。
## アトミックノートができるまでの流れ
具体的に、ごりゅごはどういう流れでアトミックノートを作っているのか。
大きな流れを書くならば、様々な場所に作られた「アトミックノートの元」を定期的なサイクルでObsidianに「書き写し」て、それを複数回にわたって振り返り、ある程度他のノートとリンクできた(と判定した)ところで「ひとまず完成」とする。
デジタルのノートには「とりあえず完成」という感覚はあるが、すべてのノートは「いつでも修正」するつもりでいるし「常に未完成」で毎回「少しずつよくしていく」という意識を持つことが重要。なのであくまでも「ひとまず完成」という言葉を使う。
そして「ひとまず完成」という言葉を使うことで「気負わずノートが書ける」ことや「だんだんよくなっていく満足感」が味わえるという副次的な効果も狙っている。結局最終的には手を動かしてなんぼ、書いてなんぼなので、悩んでなにもできないよりも、わからなくてもやってみるという姿勢は重要。
そのために、完璧ではなく「ひとまず完成」という意識を持って望むことには確実な効果がある。
## アトミックノートの出所
具体的には、どこで書いたどういうノートが「アトミックノート」になるのか。いろんなパターンがあるのは事実だが、あまりに曖昧ではなにもわからないので、あくまでも一つの事例として、もう少し具体的に書いてみる。
自分がObsidianに作るノートの「元になるもの」は、主に以下が挙げられる。
* 読書メモ
* Logseqに書いた思いつき
* アトミックノートの整理時に思いつく(ノートを分割したくなる)
* トピックノートの整理時に思いつく(こういうノートが「足りない」と感じる)
## ノートは「2段階」で書く
読書メモや思いつきは、いきなりObsidianに書くというわけではなく、大抵ほとんどは最初にLogseqに書いたものを、Obsidianに転記している。一見二度手間の無駄な行為に感じるが、こうやって「まず思ったことを書く」「時間を置いて振り返ってまとめる」という手順を踏むことで「ひとつのことに集中できる」という強みがある。
最初にメモを書くときには、全体の整合性だとか、アイデアの善し悪しなどということを考える必要はない。まずは頭の中にあることをできるだけそのままもれなく文字として書き起こして「見える化」する。そして、あとからそれを見て「まとめる」
最初は「見える化」に専念し、あとから「まとめる」ことに専念することで、全体の質が上がる。もちろんこれが二度手間になることはあるが、それでも「2回そのことについて考えることができた」と捉えれば悪くない。
## 毎日10〜30分ノートを振り返る
また、こうやって手間をかけるということは、当然そのための時間をどこかで確保する必要が出てくる。
まず大事なのは「ノートを作る時間」を確保すること。
[ほとんどのメモを「今日」のページで管理・記録するLogseqデイリー日誌術](https://knowledgestuck.substack.com/p/logseq?s=w)でも書いたように、24時間に1回くらいの頻度で「自分が書いたメモ」を振り返る時間、つまりObsidianにノートを書く時間を確保することがまず必要。(できれば10分くらいは確保したい)
そして「未完成なメモ」を振り返るための時間、つまりObsidianを見直す時間も必要。(これもできれば10分くらいは確保したい)
そして最後に、書いたノートを元にしてノートを俯瞰する「トピックノート」について考える時間も合わせると、1日30分くらい確保できると理想的。
ただ、現実的にそんな時間を毎日確実に確保するのは難しいので、まずは「自分が書いたメモを振り返る10分間」だけなんとか確保したい。
まずは、自分が書いたメモが「あとでなにを意味するかわかる状態」になってさえいればよい。(ただし、きちんとあとでわかるように書くというのも非常に難しいので、失敗を乗り越えて学ぶしかない)
具体的に「Obsidianを見直す時間」には、ごりゅごはObsidianのSpaced Repetitionというプラグインを使っている。
だが、もっとシンプルな方法として**未完成のノートにdraftタグを付ける**という管理の方法もある。定期的にdraftタグが付いたノートを振り返り、一定の基準を満たせたと判断したらタグを消すという方法。この方法は、長く続けるとdraftタグが増えすぎて破綻しそうになると思うので、もし破綻しそうなところまでノートテイキングを続けられたならば、改めて以下の記事を読んでみるとよい。
[💎Spaced Repetitionプラグインで「Ankiっぽい」ノート見直しの仕組みを実現](https://knowledgestuck.substack.com/p/spaced-repetitionanki?s=w)
[🌱信頼できる振り返りのシステムを使ってノートを書く - by goryugo - ナレッジスタック](https://knowledgestuck.substack.com/p/6cc?s=w)
[すべてのノートを定期的に振り返ることは不可能なので、振り返るノートを厳選する - by goryugo](https://knowledgestuck.substack.com/p/087?s=w)
## ノートが「ひとまずできた」と判断する基準
では最後に、ノートが「ひとまずできた」というのはどのように判断するのか。draftタグを取り外す基準はどうしているのか。
基本的には、いくつかのノートとリンクできたノートは「ひとまず完成」という判定をしている。あるトピックノートからリンクされて、なおかつ単独のアトミックノートとリンクでつながった状態。これができたら「ひとまず完成」だと考える。
トピックノートからリンクされただけでは、ノートの「横のつながり」が生まれにくく、複雑性が低いネットワークにしかならない。「一見関係がなさそうなリンクを見出すこと」によって意外な発見があるものなので、可能な限り「無理やり関連性を見出してリンクを作る」くらいの心持ちでいる。
とはいえ、**現実的に100%すべてのノートをこんな状態にできるわけはなく**、なんだかあまり他とつながらないノートはある。こういうのは諦める。そういう心の広さも重要。基準は曖昧だが「まあこのノートはいらんな」と思ったらノートを消したりdraftタグを消したりすることも厭わない。
全部のノートを保管・整理できることはデジタルの強みだが、運用する人間は全部を管理できない。**すべてのノートを活用しないともったいないという意識は捨てて、使えるものだけ便利に使えばいい**。
## 時間ではなく期間をかけて見直す
この、アトミックノートの運用において、もっとも重要なのはノートを振り返り、少しずつ改善していくこと。できればある程度の間隔を空けて、時間をかけるのではなく期間をかけてノートを見直していくこと。
一つのことに没頭して集中することは「よいこと」とされているが、集中するというのは「目の前のことしか見えない」視野の狭い状態。発想を広げるときや、アイデアを生み出すときには「広い視野」が重要なので「集中モード」は向いていない。
アトミックノートではこういう「集中しすぎ」を防ぐため、一つのことしか見えない状態にはならないように「期間をかけてノートを振り返る」
いきなりObsidianにノートを作らない、というのも「期間をかけてノートを振り返る」方法の一つでもある。
あ、そういえば昨日作ったノートは、半年前のあのノートに関連しそうなことを書いたな、ということに気がつけるのは、大抵あとから振り返ったとき。
Obsidianに作ったノートは、Logseqと違って「すぐに役に立つ」ものは少ない。個人的にはそこが面白いところだが、成果が見えづらいというのはモチベーションの維持が難しい。
ごりゅごは、最近になってようやく少し「Obsidianを使って考えを広げていく」ということができるようになった実感がでできたので、次回はそういったどうやってノートを育てていくのか、ということを、自分の「失敗例」を元にして考えてみたいと思う。
この記事は、ニュースレター「ナレッジスタック」に書いたものを編集し、まとめ直したものです。ニュースレターは以下から登録いただけます。
また、一連の話は書籍『アトミック・シンキング』にもまとめています。(この記事はその素材になったものです)
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