Softube American Class Aの便利さと一台を深く使う価値

全部が一個でできるのが便利

録音したあとにEQ、コンプレッサー、Shape、Driveを一個のプラグインで使える。Softube American Class Aで気に入っているのは、その手軽さです。

ただ、一つにまとまっていれば、それだけで使いこなせるわけでもありません。一台の中にも、覚えたいことはたくさんあります。

上部にスペクトラム、下部にShape、Equalizer、Compressor、Driveなどの操作部が並ぶAmerican Class Aの画面

上部のスペクトラムと、下部に並んだ各セクションの操作部。

American Class Aを購入したのは、2025年10月27日です。価格は6,642円でした。購入する少し前には、録音したあとにこれで軽く調整するのが、手軽な方法かもしれないと考えていました。まずはドラムをいい音にする道具として使うつもりで、すでに持っていたEqualizersはダイナミックEQとして使う、という役割分けを考えていました。

API系の音について「パンチーになる」「元気が出る」とよく言われ、特にドラムによく使われる印象があったことも、注目していた点の一つです。ドラムをパンチーで元気にしたい、という関心はありました。

道具を増やす前に、一台を深く使いたい

そもそも自分は、プラグインや音楽ソフトの選択肢が多すぎると、音を作る前に「どれを使うか」を選ぶだけで疲れてしまいます。

一つのEQやコンプレッサーの中にも、判断することは十分あります。どの帯域をどう変えるか、どのくらい音を抑えるか。その前段階の道具選びまで際限なく広げるより、使う道具を減らして、音そのものの判断に集中したいです。

でも、少ない道具を使い続けて、機材ごとの違いがわかるようになるのでしょうか。

たとえばAPIとNeveの違いを知りたいなら、自分は最初から両方を並べて比較するより、まずAPIを使いまくる方がよいと考えています。EQの効き方やコンプレッション、音のまとまり方、操作感を、一つの道具で繰り返し確かめます。

先に、自分の中に基準を作ります。

そのあとで別系統の道具を触れば、「何となく違う」だけで終わらず、自分が覚えた音や操作から何が違うのかを感じやすくなります。

学ぶ道具としての良さと物足りなさ

American Class Aでは、同じドラムに対して、コンプレッサーの抑え方やトランジェントの出方を比べられます。一台の中にある違いを繰り返し聴いて、何を変えると音がどう変わるのかを学べる。自分は、そこにも価値を感じています。

その中には、実機に由来するEQやコンプレッサーもあれば、Softubeが新たに加えた機能もあります。API系の音に関心はありますが、Softube公式は、元になったメーカー名や機種名までは明示していません。公式には、米国のミキシングコンソールの音を基礎にしたチャンネルストリップとして説明されています。

コンプレッサーはNEWとOLDを切り替えられ、公式マニュアルでは、NEWのfeed-forwardは滑らかで予測しやすく、OLDのfeedbackはよりパンチがあり攻撃的だと説明されています。

一方、Shapeは既存ハードウェアをそのままモデル化したものではなく、Softubeが独自に設計したゲートとトランジェントシェイパーです。コンプレッサーのモードを変えるほかに、Shapeでトランジェントを調整することもできます。歪みの音色を調整するDrive Characterも、元実機にはない拡張です。

ただ、作例を手がかりに学ぼうとすると、少し物足りません。

自分が確認した画面では、ファクトリープリセットとして表示されていたのは、Master Bus 1、Master Bus 2、Master Bus Glueの3つだけでした。Kick、Snare、Drum Busのようなドラム向けの設定例を手がかりに試し始めにくく、初心者向けの教材として親切だとは言いにくいです。

American Class AのプリセットメニューにMaster Bus 1、Master Bus 2、Master Bus GlueとUser Presetsが表示された画面

2026年10月10日に撮影したプリセットメニュー。

好きな70年代の音を知る入口として

自分が特に惹かれているのは、1970年代の音です。往年のスタジオの音が好きなら、無数のプラグインを使い分ける前に、コンソール系のチャンネルストリップを一台深く使えるようになる価値は高いと思っています。

当時も、一台のチャンネルストリップだけで録音やミックスのすべてを済ませていたわけではありません。テープ、外部のコンプレッサー、リバーブなど、ほかの機材も使われていました。それでも、コンソールのEQやコンプレッションを中心に、今ほど無数のプラグインを選ばずに音を作っていた時代の考え方を、一つの道具から学べることに魅力を感じます。

具体的な作品では、Steve Miller Bandの『Fly Like an Eagle』があります。Jim Gainesの回想を掲載した記事によると、このアルバムではKaye-Smith StudiosのAPIコンソールでミックスと追加のオーバーダブを行ったそうです。

アルバム全体を聴く

では、American Class Aを使えば、70年代のAPIコンソールをそのまま体験できるのでしょうか。

そこは、少し違います。EQとコンプレッサーの仕様は、70年代のAPIの考え方を引き継ぐ後継設計に近いものです。ただし、元になったメーカー名や機種名をSoftubeが公式に明示しているわけではありません。さらに、独自のShapeやDrive Characterも加わっています。

特定の70年代の卓を忠実に復刻したものと見るより、後継設計も含めて、その時代から続くEQやコンプレッションの考え方を学べる道具として捉える方がよさそうです。

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