パッドの練習は曲を弾き直すと自分の語彙になる

64パッドの練習では、理論を覚えたらすぐに自分の演奏ができるようになるわけではありません。コードの構造やスケールを理解していても、曲の流れの中で音を選び、両手を動かすには別の練習が必要です。

そのために、曲を材料にして何度も弾き直します。曲の中で理論を確かめ、録画して動きを見直し、コピーしたフレーズを自分の演奏へ持ち込みます。こうした反復を重ねるうちに、知識として知っていたものが、演奏中に取り出せる音楽の語彙へ変わっていきます。

曲を決めると理論を使う場所ができる

2024年には、毎月1曲のジャズスタンダードを題材にして練習しました。Autumn LeavesやAll of Me、Fly Me to the Moonなど、曲のコード進行に合わせてアルペジオを弾きます。スケールを機械的に上下するのではなく、曲の進行を追いながら練習することで、アルペジオは覚えるだけの知識ではなく、演奏の中で使うものになっていきました。

2025年には、メロディを覚えるだけでなく、All The Things You AreやAutumn Leavesの和声構造を分析し、abc表記やボイシングの形として記録しました。曲の構造を把握しておくと、指の動きだけに頼らず、今どこを弾いているかを確認できます。

スタンダード曲を1曲覚える どんな曲も定番進行とそのリハモで説明できる

さらに、Fly Me To The Moonのメロディを調べる中で、メロディの始まり方に共通する形を見つけたり、コードの構造を3度や5度の関係から分解したりしました。曲を弾き直すことは、既に知っている理論を当てはめるだけでなく、弾いている音の関係を発見する作業にもなります。

録画すると「弾けているつもり」と実際の動きが分かれる

練習中の感覚だけでは、演奏の問題を見落とします。2025年の三連符の練習では、録画を見返すことで、テンポが速すぎることや、余計な力が入っていることに気づきました。数日間録画を怠ったときも、再開すると三連符の2拍目と3拍目が弱いことがすぐに見つかりました。

録画は、上達したかどうかを確認する記録ではありません。頭の中にある演奏のイメージと、実際の手や腕の動きの差を見つけるための材料です。問題が見つかったら、テンポを落として、正しい動きを繰り返します。

2025年9月には、For Once In My Lifeを何百回も反復しました。速く弾くことよりも、脳が処理できる余裕を残してゆっくり弾くことを優先し、練習の記録も残しました。長時間続けることより、集中できる範囲で弾いて録画を見返す方が、次に直す場所を具体的にできます。

コピーした曲から響きとリズムを学ぶ

曲をコピーするときに覚えるのは、音の高さだけではありません。2025年6月にはGaturBaitをコピーし、ドリアンの響きをトライアドのまとまりとして聴き取る練習をしました。単音を一つずつ追うより、和声の塊として捉えることで、音を探す手がかりが増えます。

For Once In My Lifeでは、歌メロやソロだけでなく、転回形やボイスリーディング、ホーンやストリングスの流れにも注意を向けました。譜面に書かれたコードをそのまま押さえるだけではなく、原曲の音を聴きながら、どの音がどう動いているかを確かめています。

コピーしたフレーズは、完成形をそのまま再現するためだけのものでもありません。Feel Like Makin’ Loveでは、溜めやオクターブの実験に失敗し、間違えたあとに戻る動きを繰り返しました。その過程で、コピーしたフレーズが自分の節回しへ変わっていきました。ジョン・スコフィールドのトライアドの使い方や、ブルースソロの模倣から得たレイドバックの感覚も、曲を通して試すことで演奏の選択肢になっています。

コピーの深め方

両手で弾けるようになると理論が演奏になる

2026年2月には、Fly Me to the MoonとAll the Things You Areを、コードとメロディを両手で同時に演奏する練習へ進めました。録画して見返すサイクルを毎日続けると、弾いている最中には分からなかった動きのずれを確認できます。難しい曲でも、短い反復と確認を重ねることで、少しずつ曲の流れを身体に入れていきました。

約1年の集中練習を経て、アドリブでも身体の反応が鈍らず、自分の表現として弾けているという手応えが出てきました。2026年3月には、コードのボイシングを論理的に分解し、「なぜそう鳴るのか」を把握してから反復すると、指が自然に動くまでの時間を短縮できるという見立ても得ています。

この流れで起きているのは、理論を捨てて感覚だけで弾くことではありません。曲の中で構造を確かめ、耳で聴き、手を動かし、録画や失敗から修正する。その反復によって、理論が演奏中に使える語彙へ変わっていきます。曲を弾き直すことは、覚えた曲を消費する練習ではなく、自分が選べる音の組み合わせを増やすための練習です。

🛤️ 練習論 ⭕64パッドを楽器として使う:まとめ

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