デバイス:音楽理論を即興で取り出せる道具に変える

デバイスは音楽理論を即興で取り出せる道具に変換する手法。定義、リックとの掛け算、リズムとスペース、身体化までを一続きで解説します

音楽理論を一通り勉強しても、いざ演奏になると覚えた内容を使えないことがある。スケールもコードも覚えているのに、即興では次に弾く音を決められない。厄介なのは、知識の量を増やしても解決しないことです。弾いている最中に「ここはドリアンスケールで」と考えている余裕が、そもそも無いからです。

必要なのは、理論を演奏中に使うための操作に分けることです。その操作をここでは「デバイス」と呼びます。デバイスは、理論を音の選び方や順序として覚える方法です。デバイスとして練習した内容なら、弾く前に長く考えずに使える。


理論を操作手順に分けてデバイスにする

ここでいうデバイスは、特定の音の並び(フレーズ)ではなく、フレーズをどう変えるかという方法です。「ドミナント・モーション」という言葉を知っているだけの状態と、特定の音を選び、順番に弾いて解決感を作る方法を覚えている状態は違います。前者は用語の理解、後者はデバイス。演奏中に使うには、概念を実際の操作まで分けて覚える必要がある。

操作名を内容と対応させて覚えると、演奏中に毎回理論を説明し直さずに済む。複雑な理論ほど、この違いは大きくなります。たとえば「オルタード・スケール」は、「♭2リディアン♭7」と捉え直せます。メロディックマイナーを基準にする代わりに、使う音程の並びとして覚える方法です。楽器では、この並びを特定の指使いとして練習する。全キーで弾くときも、同じ指使いを別の位置へ移す。

演奏中には、操作名だけを思い出せばよい。

デバイスを増やすと、演奏者が即興で行う作業が変わる。何も決めずに旋律を考えるのではなく、覚えた操作を選び、組み合わせる。「何を弾けばいいか分からない」と止まる回数も減る。デバイスの定義は音楽のデバイスは理論を即興で使える道具に変える、理論の学び方の全体像は音楽理論を味方にする学習術にあります。

すでに弾けるマイナーフレーズやトライアドを別のコードで使う例は、知っている形で複雑な和音を鳴らすで具体的に確認できます。


リックの音やリズムをデバイスで変える

デバイスを試す素材として、リック、つまり定番のフレーズを使います。まずはリックを、楽譜を見ずに弾けるまで覚える。その後、リックの一部をデバイスで変える。

リックを毎回同じ形で弾くのではなく、音やリズムを変えて使います。演奏者はフレーズを、音階、音域と順序、リズム、装飾や奏法に分けて考えられる。このうち一つを変えると、聴いたときの印象も変わる。お気に入りのリックのリズムを残して音階を変える。音階を保ったまま休符を入れる。演奏者は同じリックから複数のフレーズを作れる。

新しいリックを多く暗記しなくても、使えるフレーズの種類を増やせる。

音階を変える操作も、デバイスとして覚えられる。アプローチノートを足す、インターバルの上下を入れ替える、スケールの一部だけ使う。操作ごとに名前を付けておけば、弾くときに選べる。ブルースなら♭5をはさむ装飾、ビバップならクロマチックの経過音が使える。ジャンルごとの特徴を、音の選び方として練習する。練習素材には、スタンダード曲のメロディが向きます。メロディをアルペジオとして捉え、コードトーンの順番を確認しながら弾く。この練習では、聴いた音と弾いた位置を対応づけます。リックへの適用はリックにデバイスを掛けるとフレーズが無限に広がる、暗記とコピーの進め方はコピーの深め方で説明しています。素材にする曲そのものの覚え方はスタンダード曲を1曲覚えるが詳しい。


リズムや休符もデバイスとして分けて覚える

演奏者は、音の選び方と同じように、リズムや休符の入れ方もデバイスとして分けて覚えられる。譜割りを変える、特定の音を弾かずに休符にする、リズムの並びを変える。

同じ音を使っても、譜割りが違えば印象は大きく変わる。音の選び方とリズムの操作を組み合わせれば、一つのフレーズを複数の弾き方で使えます。

音を装飾する場合も、同じように操作を分けて覚えます。

♭5を経過音としてはさむ、m3からM3へ半音でスライドする。どちらも特定のフレーズだけに使う方法ではなく、複数のフレーズへ適用できる。こうしてデバイスごとに覚える。

もうひとつ、音を短く切るか伸ばすかで、聞こえ方が変わります。人は、音を短く切ると次の音が実際より早く来たように感じます。これは時間縮小錯覚と呼ばれる知覚です。スタッカート気味に弾くと、音が拍より早く聞こえやすい。一定の拍に合わせて弾くには、音を出す瞬間と、その音をどれだけ伸ばすかの両方に意識がいります。この切り方や伸ばし方は言葉にしにくく、繰り返しの練習で覚えます。リズム系デバイスの具体例はリズムとスペースもデバイスとして扱えるにまとめました。


名前を付けて練習すると即興で選びやすくなる

ここまでの方法は、理屈を理解しただけでは演奏中に使えません。知っていることと、楽器で弾けることは別です。デバイスごとに指使いと音の聞こえ方を確認し、楽譜を見ずに弾けるまで繰り返す。演奏中に手順を思い出さずに弾けば、次のフレーズや共演者の音にも注意を向けられる。

この練習では、デバイスごとに名前を決めます。

名前と操作を対応させて覚えると、一音ずつ次の音を選ぶ代わりに、覚えた操作を選べる。選んだ操作を続けて使うか、別の操作へ変えるかも判断できる。

即興では、演奏者がデバイスを順番に使ってフレーズを作ります。各デバイスを楽器で繰り返し練習し、意識しなくても弾ける状態にする必要がある。この練習に近道はありません。理屈を理解してから楽器で使えるようになるまで、反復が必要です。ただし、一度に長く練習しなくても構いません。10分練習のように短い時間でも毎日弾けば、演奏者は覚えた内容を思い出しやすくなる。練習方法はデバイスを身体で覚えると即興が言葉を選ぶように変わる、即興練習の全体設計は即興演奏のために練習すべきことで扱っています。


覚えた理論を演奏中に使えないときは、実際の操作まで分けて練習します。演奏者はデバイスごとに指使いと音の並びを覚える。演奏中に選んで使う。迷わず弾けるまで、同じ操作を繰り返します。

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